【イギリス・小説】2019年の本屋大賞を獲得した『カササギ殺人事件』(アンソニー・ホロヴィッツ著)は独創性に溢れた極上ミステリー。

こんにちは、イギリス文化が大好きなKAZUです。

英語学習雑誌の「ENGLISH JOURNAL 2019年10月号」で、アンソニー・ホロヴィッツさんのインタビューを読んでとても気になった本作、

「カササギ殺人事件」(創元推理文庫刊)

を読みました。

上下巻合わせて700ページ以上に及ぶ大作は、ミステリーを普段読まないボクでも、その表現技法に感嘆しました!

今回は、「カササギ殺人事件」を読んでの感想と考えたことをお伝えします。

注意
本記事ではミステリーの肝となるストーリーの種明かしをすることはありませんが、ネタバレを含みますのでご了承ください。

著者「アンソニー・ホロヴィッツ」について。

アンソニー・ホロヴィッツさんは、ロンドンのパディントン出身の小説家です。

シャーロック・ホームズシリーズの「絹の家」「モリアーティ」を出版しています。

また、脚本家としても活躍しており、「名探偵ポワロ」「バーナビー警部」「刑事フォイル」などの脚本を手掛けています。

参考 アンソニー・ホロヴィッツWikipedia

本書の訳者は英米文学翻訳家の山田蘭さんです。

参考 翻訳者は語る 山田蘭さん小説丸

「カササギ殺人事件」を読むことになったきっかけ。

ENGLISH JOURNAL2019年10月号(以下、EJ)のアンソニー・ホロヴィッツさんのインタビューを読んだことがきっかけです。

ENGLISH JOURNAL2019年10月号の特集は「NETFLIX&Huluフル活用ガイド」映画やドラマで英語学習するためのヒントが詰まった1冊。

ボクはアガサ・クリスティーの作品ですら読んだことがなく、シャーロック・ホームズを少し読んだことがある程度でミステリー好きとは言えないのですが、

ホロヴィッツさんがコナン・ドイル財団公認でシャーロック・ホームズの新作長編を出していること、

そして、 EJのインタビューで以下のように話していたことで興味を持ちました。

〜 I decided to write them for books, I wanted to do two things. The first was to do things that have never been done before, to write murder mystery in a completely new way, to try and invent something that would surprise people. And I also wanted to write the best puzzles you could get.

「(前略)本として書くことになって、二つのことをしたいと思いました。一つは、今まで行われたことがないことをやるということ、殺人ミステリーを完全に新しい方法で書く、人々をびっくりさせるようなものを生み出すことを試みる、ということでした。それと同時に、可能な限り良質な謎を書きたかった。」
引用元:ENGLISH JOURNAL2019年10月号 92ページ

ホロヴィッツさんの話の中にあった、「完全に新しい方法で(in a completely new way)」というのがとても気になりました。

殺人事件が起きてそれを名探偵が謎解きして真犯人と真相に迫るストーリーで、一体全体どのような点で「完全に新しい方法なのか」と。

また、イギリス好きとして、イギリス人作家が書く小説、舞台はもちろんイギリスというところにもとても惹かれました。

「カササギ殺人事件」の簡単なあらすじ。

1955年のイングランド・サマセット州、准男爵のマグナス・パイの屋敷で家政婦として働いていたメアリ・ブラキストンが鍵のかかった屋敷の階段下で倒れ死亡。

ストーリーはその葬儀の日の出来事から始まる。

メアリの息子、ロバートがメアリ殺害の犯人ではないかと囁かれる中、ロバートの婚約者ジョイが、名探偵アティカス・ピュントに事件の真相解明を懇願する。

ジョイをいったんは追い返したピュントだったが、翌日の新聞紙面で見たさらなる事件を知り、パイ屋敷のある小さな村の事件解明へ動き出す。

「カササギ殺人事件」を読んで感じたこと・考えたこと。

クリエイティブな構成に感嘆!

物語はメアリ・ブラキストンの葬儀の日から始まるのですが、その前に、「ロンドン・クラウチ・エンド」という見出しで「わたし」という人物が「カササギ殺人事件」について語っています。

なんとなく冒頭のこの部分を読んでいて、

「誰かわからないけど、本書のまえがきか何かだろう」

と思ってました。

その「わたし」の語りが終わって開くと、小説を開いた1ページ目でよく目にする本のタイトルと著者名が載るとびらページに出会します。

そこには、

名探偵アティカス・ピュントシリーズ
カササギ殺人事件
アラン・コンウェイ

と書かれてます。

「あれっ、この作品の著者はアンソニー・ホロヴィッツではなかったか」

と不思議に思ってカバーを見返したりしていました。

そう、この作品は「作中作品」なのです。

現代の編集者である「わたし」が、アラン・コンウェイの1955年のサマセット州が舞台で名探偵アティカス・ピュントシリーズの「カササギ殺人事件」を読んだという設定の、

アンソニー・ホロヴィッツさんが書いた作品です。

「カササギ殺人事件」に関するウェブ記事等を目にしていれば少なくとも「作中作品」であるということに気づいたわけですが、

ボクは基本的に読書や映画鑑賞をする際にあまり多くの情報を得ずして作品を鑑賞するようにしているので途中までそのことに気付いていませんでした。

そう、気がついたのが、下巻にたどり着いたとき。

上巻がアティカス・ピュントを主人公とした謎解きでした。

下巻の冒頭に再び「ロンドン・クラウチ・エンド」という見出しで「わたし」が登場します。

というのも、上巻でアティカス・ピュントが謎解きの題材を揃えてクライマックスを迎えるというところで、「わたし」は、

アラン・コンウェイがよこした原稿の「カササギ殺人事件」の最後の結末部分がないことに気がつくのです。

そして下巻の中心は、「わたし」こと、クローヴァーリーフ・ブックスの小説部門の編集者、スーザン・ライランドが中心になります。

原稿の結末部分を求めていくわけですが、なんと、著者のアラン・コンウェイが亡くなっていて、その死の解明にスーザンが動くという構成になっています。

確かにこのストーリー構成は驚きでした!

アティカス・ピュントの謎解きに没頭して読み進めてさあ下巻となったとたん、その謎解きはストップしてしまうわけです。

とても不思議な感覚と同時に新たな物語が始まり、2つの物語が交錯していくのです。

ボクはミステリー小説の何を知っているわけでもないのですが、この作風にはホロヴィッツさんの言葉通りの「完全に新しい方法」だと感じました。

まさに、このような奇想天外な発想に出会えただけで、自分の視野も広がったような気がします。

EJのインタビューでは以下のようなことも語っていました。

I think what the solution to Magpie Murders is – there are two solutions, not one, first of all. Two for the price of one.

「『カササギ殺人事件』の答えが何かと言えば、まず二つ答えがあるのです。一つではなく。
引用元:ENGLISH JOURNAL2019年10月号 93ページ

2つというのはなるほどそういうことか、と読了した後にわかりました。

とにかく、発想が凄い、もう、この単純明快なこのコトバに尽きる作品です。

読書体験とは何かということを思い知らさせてくれる下巻。

上述の通り、下巻の主人公のスーザンが、アラン・コンウェイ死亡との真相究明と「カササギ殺人事件」の結末部分を探しに向かうストーリーとなります。

スーザンは出版社の編集者であり、探偵ではありません。

ところが、まるでアティカス・ピュントが降りてきたかのように、スーザンは人と会うたびに注意深く観察し、思考を深めて結論にたどり着きます。

もちろん、普通ではありえないことですが(そもそもフィクションですけどね)、

ここで感じたことは、これぞ読書体験の真髄ではないかということです。

読書体験で得られることやメリットというのはいくつか挙げられると思います。もちろん、本のジャンルによっても変わってきます。

その中で、ボクは、

読書を通じて擬似的な体験ができる

ということがあると思います。

本の中の自分が体験することのない物語の世界に入り込むことによって、あたかも自分が体験したかのような感覚になることです。

登場人物の気持ちに寄り添い、理解し、細かい情景を観察し、物語を俯瞰する、この擬似体験が現実の世界の自分に役立つことがあると感じます。

「カササギ殺人事件」のスーザンはまさに、アラン・コンウェイのアティカス・ピュントシリーズを編集者の立場で何度も彼の作品に目を通していて、

そこから得た着想を活かして自問しつつも最終的にはアラン・コンウェイの死の真相を解明するのです。

まさに、これが読書の真髄だなと思いますし、それを表してくれている下巻も魅力たっぷりです(とはいえ、下巻になってアティカス・ピュントの推理の行方はどうなったんだよ、といい意味でズッコケましたが)。

「カササギ殺人事件」のまとめ。

  • 著者はイギリス人小説家のアンソニー・ホロヴィッツさん
  • 翻訳版は上下巻構成(創元推理文庫刊)
  • アガサ・クリスティーのオマージュ作品と呼ばれるミステリー小説
  • 2019年本屋大賞翻訳小説部門第1位

最初は原書(英語版)から読もうとも考えましたが、初めて読む作家の作品ということと、ミステリーをあまり読んだことがないことから、

まずは翻訳版で楽しめるかどうか、最初は日本語から読んでみようというところからスタートしました。

翻訳版ですっかりはまってしまって、また時を置いて今度は英語版を読んでみたいと思ってます。

また、「カササギ殺人事件」を読んでいる間に、アンソニー・ホロヴィッツさんの新しいミステリー小説が発売になりました↓

もちろん、こちらも読みたいと思います。


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